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Bluetoothによる測角(AoD)・屋内位置測位とBluetooth 5.1について

2019.07.22

こんにちは。イーアールアイの三浦です。今日は最近問い合わせが多い電波による測角技術についてお話します。

BLEGONIO ®

本技術は研究開発中の技術です。

イーアールアイでは2014年から岩手大学と共同でBluetooth Low Energyを利用した測角技術に取り組んでいます。Bluetooth Low Energyの”BLE”と、角度計”Goniometer”を掛け合わせてBLEGONIO®と名付けました。

BLEビーコンを利用した屋内位置測位システムでは、ビーコンからの電波の強弱から位置を推定する方法が主流になっています。屋内環境では電波は複雑に反射するため、電波の強弱で位置を推定する方法による高精度の位置測位は困難です。

技術概要

BLEGONIOデバイス(固定局)からの電波を、スマートフォン(移動局)で受信し、その受信した電波信号を計算することで、BLEGONIOデバイス(固定局)から見た時にスマートフォンがどの方向にあるかを知ることが出来ます。

これを電波の出発方向の推定と言います。AoD(Angle of Departure)またはDoD(Direction of Departure)と略されます。

※電波の向きが逆の構成では、到来方向の推定となり、AoA(Angle of Arrival)や、DoA(Direction of Arrival)という言葉になります。

複数のアンテナを利用して、受信した電波の位相差を観測することで電波の到来方向がわかる技術は従来からありましたが、一般的なスマートフォンを利用して出発方向を検出できるというのが、他にはない全く新しい技術です。

通常、市販のスマートフォンでは電波の位相を知ることが出来ません。スマートフォンでは電波の測角は不可能と思われていました。しかし、特殊な回路を実装したBLEGONIOデバイスからのビーコン電波をスマートフォンが受信・処理をすることで、電波の位相情報を復元し、測角を実現することが出来るようになりました。

更に、予め設置位置、設置向きが分かっているBLEGONIOデバイスを複数使って、それぞれ測角を行うことで、その角度方向の直線が交わるポイントにスマートフォンが所在していることがわかります。これにより屋内でも正確な位置推定をすることができるようになります。

位置測位精度

イーアールアイと岩手大学は、屋内での位置測位精度を競うMicrosoft Indoor Localization Competition2017(2017年4月に米国・ピッツバーグで開催)に参加し、2D部門で世界第3位という好成績をあげることができました。1位、2位はPDR方式ですので、電波を利用した測位方式に限れば最も精度が良かったことになります。

コンペジション会場は全体で32m×22mの2フロア構成になっていて、上のフロアと下のフロアは吹き抜けになっていて階段でつながっています。運営側に指定された20地点について、それぞれの地点で位置測位を行い、測位した位置座標と実際の位置座標との誤差の平均値が最も低いチームが優勝となるルールです。

ルール上は8台の固定局(BLEGONIOデバイス)を設置することが許されていましたが、部材調達の関係から会場に設置できた固定局は(BLEGONIOデバイス)は5台のみでした。(下のフロアに2台、上のフロアに3台を設置。)

コンペジションの結果によると、階段や障害物の陰になってしまう地点では誤差が大きくなってしまっていますが、複数のBLEGONIOデバイスから見通せる地点では良好な精度が実現できていました。

Bluetooth5.1のAoA・AoD

Bluetooth5.1では、AoA・AoDの仕組みが盛り込まれました。BLEGONIOの技術とは異なり、Bluetoothのコアチップレベルで位相を観測する技術が使われています。数年後にはBluetooth5.1のAoA・AoDに対応したスマートフォンが発売されると思われます。屋内ナビゲーションのサービスもいよいよ本格化してくるかもしれません。

私のように東京駅で毎回迷ってしまうような人々にとっては待望のサービスであり、早く実現して欲しいと思います。我々としてはその分野で世の中にお役に立てるよう、これからもBluetoothに関する知の深化を進め、その時に自分が関わった技術が利用されていれば技術者冥利に尽きると思います。

屋内位置測位は今後も目まぐるしい技術変化が期待されます。とても面白い注目の市場となることは間違いありません。

引き続きイーアールアイでは、屋内位置測位技術をテーマに研究開発・製品開発を進めていきたいと思います。

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